2014年10月02日

ただ憧れを知るものだけが





私 「先生、おとといの夜のことですが、いつもは数秒でたいらげられる『鮭・鱒のパテ プレミアム白猫版』に先生がまったく興味を示されないので放置して蟻にたかられるのもどうかと思い餌の入った小皿を持って庭に出ましたところ、数週間姿をみせなかった火星ちゃんが車の下から出てきてこれをおいしそうに食べて行きました。月の光の下、パテを『くっちゃっくっちゃっ』と食べながら火星ちゃんが私に語ったところによると、アル・ジャジラの一味で陰謀を企んでいるとの嫌疑をかけられて指名手配が出ているのでなかなか姿を現せないのだということでしたが、どうしてこんなことになってるんですか?」

先生 「あれはモロッコ国王の仕掛けた罠です。火星ちゃんは純粋に利潤を追求する単なる実業家です」

私 「ですよね。モロッコ国王もあれですか、先生んちのお知り合いでそれで嫌がらせしてるんですか? もしかして『MOちゃま』『私の聖戦よ』と呼びあう仲だとか」

先生 「その辺りは公にされてませんが、幹部がとんでもないへまをやらかしたのでその恥を火星ちゃんになすりつけているのです」

私 「ひどい話ですね」

先生 「ひどい話です。私も長年生きてきましたが、こんなひどい話は数百年に一度起こるか起こらないかでしょう」

私 「おばちゃまに何とかしてもらえばいいんじゃないですか? こう言っては失礼ですが、モロッコとアメリカ合衆国では国力に格段の差が・・・」

先生 「おばちゃまはおばちゃまで別の罠を仕掛けているので、今回のことに関しては片目をつぶっています」

私 「 あの人、頭いいですもんね。おばちゃまのスピーチを聞くたびに私は『地球幼年期の終わり』のオーバーロードを思い出します。『流暢な英語』。」

先生 「x」

私 「あ、先生、今笑われましたね」

先生 「いいえ、人違いです」

私 「いいえ、先生は確かにお笑いになられました。火星ちゃんには危うく絞首刑になるところを救ってもらったので、とにかく無事でいてほしいものです」

先生 「アッラーフがご采配くださるでしょう」

私 「ところで今日のおやつはどういたしましょうか?」

先生 「黒糖きな粉ケーキを焼いてきたのでダージリンティーを淹れてください」

私 「かしこまりました。あたたまりそうですね・・・ところで先生、あの晩、鮭・鱒のパテを敢えて召し上がらなかったのは火星ちゃんが外にいたことを察知なさっていたからですよね? (ほろり)」

先生 「ただ憧れを知るものだけが」





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